新型コロナウイルスの感染により、「ロックダウン」や「クラスター」「オーバーシュート」などの言葉は報道されているが、最も懸念しなくてはいけないのは、企業の倒産は人員整理による家計経済への直接的な影響。
今回は現在の倒産状況とRenchanの私見を踏まえた今後の見通しを書いていきたいと思います。
3月末までの状況
帝国データバンクの情報
帝国データバンクより、直近で以下の記事が発表されました。
新型コロナウイルス関連倒産
・「新型コロナウイルス関連倒産」は、全国に18件判明(3月26日時点)
帝国データバンクより
・法的整理は9件、事業停止は9件
これを多いと取るか、少ないと取るかはブログ読者の感覚に委ねるところですが、3月中旬にはこれらの状況を踏まえた記事が出ていたので、紹介する。(下線、太字は筆者)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、関連倒産が発生している。
社長の高齢化、後継者・人手不足…。加えて最近では消費増税、暖冬の影響など中小企業の経営環境は不安要素が拡大するなかで、2019年の全国企業倒産は2年ぶりに前年を上回った(8354件、前年比3.6%増)。さらに今後は、キャッシュレス消費者還元事業やオリンピック終了の反動を踏まえ、「今後、中小企業の倒産件数が増加基調に転ずるだろう」との見方が主流となっていたなかでの新型コロナウイルス問題。影響は出始めたばかりではあるが、もともと経営が行き詰まっていた経営者にとっては法的整理や事業停止を決断させる大きな要因となりつつある。
(中略)
【本当の意味での「コロナ倒産」が増えるのはこれから】
新型コロナが企業経営に及ぼす影響は、これから徐々に深刻化していくだろう。その証拠に、現時点で判明している12件すべては、もともと経営環境や業界環境の悪化などで経営難の状態に置かれていたという共通点がある。新型コロナが追い打ちをかけて法的整理または事業停止の決断に至ったものの、主要因にはなってはいない。そもそも新型コロナの影響が本格的に注目され始めたのは1月下旬。「会社はこんなにも早く倒産するものなのか?」という意見は多いはずだ。
今後、懸念されるのは、現時点では確認されていない新型コロナを主要因(直接的要因)とする法的整理や事業停止の動向だ。新型コロナ発生直前までは業績好調な優良企業であったとしても、終息までの時間が長期化すればするほど財務内容は悪化、従業員の士気も低迷していき、法的整理や事業停止に追い込まれるケースが出てもおかしくはない。さらに2次的な問題として、そうした企業を主力販売先としてきた企業の売り上げが減少、販売代金回収難などに見舞われ、連鎖倒産が発生する恐れもある。
実際、帝国データバンクの調査によると、3月17日までに上場企業79社が新型コロナの影響を受けたとして業績の下方修正を発表した。減少した売上高は計5553億円に上り、業種別では「製造業」(38社、構成比48.1%)、「サービス業」(12社、同15.2%)、「卸売業」(11社、同13.9%)、市場別では「東証1部」(45社、構成比57.0%)、「東証2部」(17社、同21.5%)、「東証マザーズ」「ジャスダック」(各8社、同10.1%)と続いた。こうした動きの影響はこれから下請けの立場にある中小企業に徐々に波及していくはずだ。
(帝国データバンク情報部 情報編集課長 阿部成伸)
ダイヤモンドオンラインより
今までの倒産はある程度厳しい見方であったことに加え、新型コロナが追い打ちをかけたという見方が強い。
しかし、今後は、優良企業であっても状況の長期化により、財務状況の悪化による事業停止や人員整理のケースもあり得るとし、それらの企業の取引先の企業もに影響が及ぶとしている。
また、上場企業で業績の下方修正を発表している企業が79社あることから、これらの企業の下請けを行っている中小企業にも波及するのではと危惧している。
東京商工リサーチの状況
東京商工リサーチでは、以下の記事がアップされていた。 (下線、太字は筆者)
上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (3月27日正午現在)
「新型コロナウイルス」の感染拡大で、上場企業の売上、利益でそれぞれ1兆円超が消えた。
国内外で感染者数が拡大するなか、上場企業が相次いで今期業績の下方修正を開示した。それによると、業績影響の数値を開示した135社の減少額合計が売上、利益ともに1兆円を超えた。
3月27日正午までに、新型コロナウイルス関連で情報開示した上場企業は765社に達した。また、自主的な開示はないが、東京商工リサーチの独自調査で工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業が18社あった。合計783社の上場企業が、新型コロナウイルスの対応を明らかにした。これは全上場企業3,778社の20.7%にとどまる。
※本調査は、2010年1月23日から、全上場企業の適時開示、HP上の「お知らせ」等を基に集計。
※「影響はない」、「影響は軽微」は除外し、「新型コロナウイルス」の記載はあっても、直接的な影響を受けないケースは除外した。(中略)
工場や事業拠点閉鎖の動き 中国以外の地域で増加
工場の操業停止・休業延長などは45社、また店舗・事業拠点の休業は52社だった。感染源となった中国国内での工場操業や事業再開が増える一方、ここにきて欧米など、中国以外の工場の操業停止や事業拠点の休業などを公表する企業が増加している。化粧品生産などを手掛ける(株)日本色材工業研究所(TSR企業コード:291145132)はフランス子会社と化粧品製造ラインの操業を暫定的に2週間休止すると発表した。欧米で感染が急拡大し、現地での生産・販売活動に支障をきたす企業が出てきた。
従業員などに感染者が出たことを公表した企業は62社。この他、感染防止のために在宅勤務やテレワークや時差出勤の実施、従業員の働き方の変更を公表した企業が54社あった。実際に感染者が発生した際の企業としての対応策や、BCP(事業継続計画)に対する重要性が増している。
(中略)
製造業、サービス業、小売業で7割
業種別では、製造業が最も多く317社(構成比40.4%)を占めた。サプライチェーンの乱れや人手確保の問題などから正常稼働には至っていないケースも多い。次いで、サービス業117社(同14.9%)、小売業110社(同14.0%)と続き、上位3業種で約7割を占めた。
また、運輸業は28社(3.5%)だったが、このうち新興航空会社の(株)スターフライヤー(TSR企業コード:662009819)は3月25日、需要減退による来期の見通しが不透明なことから運転資金への充当を目的に41億円の資金を金融機関から借り入れると発表した。
移動制限や自粛の影響で航空需要が急激に縮小するなか、観光や宿泊関連に限らず航空輸送関連企業への影響も甚大となっている。
東京商工リサーチより
新型コロナウイルスの影響で「製造業」「サービス業」「小売業」で約7割が影響を受けているとのデータが発表された。
これらの業種はそれらに従事している人も多いことから、家計経済に大きな影響を受けることが想定される。
今後影響が懸念される業界は?
インバウンド頼りの業界
サービス業である、「観光業」や「宿泊関連」また、移動制限が続けば、「航空関連」「旅客輸送関連」もインバウンドのみならず、内需でも影響が出ると想定される。
小売業、製造業は?
「小売業」「製造業」は、サプライチェーンの復旧が景気を左右する。原材料や部品を海外に依存している場合、これらの物流機能の復旧時期により、その回復時期やダメージの長期化が分かれる。
現在は中国での工場は復旧している状況ではあるが、欧米や東南アジアなどでも、工場の停止が相次いでいることから、楽観視はできない。
倒産ではなく人員整理や賃金について
既に派遣社員の契約打ち切りも始まっている
新型コロナウイルスの影響で、派遣労働者が派遣契約の打ち切りを行うケースが出始めているとの報道が出ております。
労働契約に基づけばルールに則り行っていることではあるが、一斉休校要請や外出自粛要請が行政から出している以上、セーフティーネットの準備をしてもらいたいと、筆者は願う。
ノーワーク・ノーペイの原則
ノーワーク・ノーペイの原則とは
「ノーワーク・ノーペイの原則(労働基準法24条)」とは、労務者が「労務」を提供していない場合、つまり働いていない場合、使用者はその部分についての賃金を支払う義務はないという、給与計算の基本原則のこと。
人事ポータルサイト【HRpro】より
とあります。
ここで問題になるのが、仮に今回の新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出た場合にこの「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるかとの問題。
ノーワークノーペイの原則が適用されるかどうかの判断基準は、「労働者が労働できなかった原因は誰にあるのか」ということです。例えば、体調不良や私用による遅刻や早退など「労働者に責任がある」場合や、台風や大雪などによる遅刻や早退のように「労働者にも企業にも責任がない」場合には、ノーワークノーペイの原則が適用されます。
d’s jouornal「 社労士監修】ノーワークノーペイの原則。こんなときどうする?を法律を交えて解説 」より
上記にあるように、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言等により、店舗の閉鎖や工場の稼働停止などが 「労働者にも企業にも責任がない」場合に当てはまる場合は、賃金の支払いが無い可能性もあります。
今後の政府や地方公共団体の動向に注視が必要です。
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